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認知行動療法で学ぶ「10 の認知のゆがみ」

――こころのレンズをやさしく磨くセルフケア入門

私たちは出来事をそのまま見ているようで、実は「考え方」というレンズを通して見ています。レンズがくもると、気分や行動も影響を受けます。認知行動療法(CBT)は、このレンズを少しずつ磨き、こころを整える心理療法です。その第一歩が 「認知のゆがみ」――物事を極端に、あるいは一面的に受け取る思考のクセに気づくことです。ここでは代表的な 10 種類をご説明します。

10 の認知のゆがみを詳しく見る

1.白黒思考

「成功か失敗か」の二択で判断するクセです。たとえば一度寝坊しただけで「私は社会人失格だ」と感じるなど、極端な評価をしてしまいます。その結果、自分を否定する気持ちが強まり、挑戦が怖くなることがあります。

2.過度の一般化

一回あっただけの出来事を「いつも」「絶対」に広げてしまうクセです。発表で噛んだ経験があった時に、「私は一生、人前が苦手」と決めつけてしまうと、実際の能力より自信を失いやすくなることがあります。

3.選択的注目

ネガティブな情報だけを拡大してしまう傾向です。テストで 99 点を取っても、間違えた 1 点ばかりに目が行き、達成感を感じられません。

4.マイナス思考

褒め言葉や成果を即座に否定するクセです。誰かに褒められても「それ、お世辞でしょ」と受け取ってしまうと、ポジティブなフィードバックが心に届かず、自己肯定感が育ちにくくなります。

5.結論の飛躍

確かな根拠がないまま、最悪の結果を決める思考です。たとえばメールなどで相手の返信が少し遅れただけで、「嫌われたんだ」と断定してしまうと、人間関係の不安が膨らみやすくなります。

6.拡大解釈と過小評価

失敗を大きく、成功を小さく捉えるクセです。小さなミスを大事件のように感じ、努力で得た成功を「運が良かっただけ」と片付けてしまうと、達成感が得られにくくなってしまいます。

7.感情的決めつけ

「自分が不安なのだから現実も悪いはず」と、感情をそのまま事実とみなす傾向です。たとえば緊張しているときに「必ず失敗する」と決めつけてしまうと、本来の力を発揮しづらくなります。

8.すべき思考

「~すべき」「~でなければならない」という必要以上に厳しいルールを、自分や他人に課すクセです。理想と現実のギャップが大きくなるほど、罪悪感や怒りが強まります。

9.レッテル貼り

人や自分に否定的なレッテルを貼ってしまうクセです。たとえば仕事でミスをした時に「自分はダメ人間だ」などと断定すると、成長の余地を自ら閉ざしてしまいます。

10.自分への関連付け

起きたことをすべて自分(または特定の他人)のせいにするクセです。たとえば上司の機嫌が悪いとき、そこには様々な理由があるにもかかわらず、「自分の報告が悪かったせいだ」と背負い込むと、必要以上に落ち込みやすくなります。

ゆがみが起こる理由

落ち込んでいるときには、頭に浮かぶ考えがネガティブなものになりやすいといわれています。もともと人間は危険を素早く察知する本能があるため、不安や緊張を感じるのは自然な反応です。しかし、その働きが強すぎるとバランスを欠き、上記のようなゆがみとして現れやすいのです。

ゆがみに気づく簡単 3 ステップ

1. 出来事・気持ち・考えを書き分ける

一日の終わりに「事実」「頭に浮かんだ考え」「感じた気分」をメモして頭の中を“見える化”します。

2. キーワードを探して仕分ける

メモに「いつも」「全部」「すべき」などがないか探し、どのゆがみに近いか丸を付けます。

3. バランス言い換え

例:「1 点ミス=全部ダメ」→「成功した 99 点も事実」と、別の視点を意識的に加えます。

まとめ

認知のゆがみは「こころのレンズのくもり」。

  1. 名前を知る
  2. 日常で気づく練習をする
  3. バランスある言い換えを試す

この 3 つを習慣にすると、思考がしなやかになり、こころが少し軽くなるはずです。

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