心の不調を感じたとき、カウンセリングを受けてみようと思っても「どれくらい通えば効果があるの?」「症状によって回数は違うの?」といった疑問がわく方も多いのではないでしょうか。
この記事では、認知行動療法(以下CBT)で推奨されているカウンセリング回数の目安を、代表的な心の状態や症状ごとにご紹介します。あくまで「目安」であり、個人の状態によって適切な頻度や期間は異なります。主治医やカウンセラー(臨床心理士/公認心理師など)と相談しながら、無理なく取り入れてみてください。
目次
認知行動療法(CBT)とは?
認知行動療法(CBT)とは、「考え方」や「行動」のクセに働きかけることで、ストレスや不安、落ち込みなどの心の不調を和らげることを目指す心理療法です。
症状を「変えよう」とするのではなく、考え方や行動の幅を広げて、より自分らしく生きる力を育むアプローチです。
薬物治療との併用や、再発予防の手段としても活用され、科学的根拠に基づいた心理療法として注目されています。
症状別:カウンセリング回数の目安
1. うつ病(大うつ病)
推奨回数の目安:16〜20回程度
うつ病に対するCBTでは、週1回ペースで3〜4か月継続することが多く、16回前後が1クールの目安とされています。初期は行動活性化(少しずつ行動を増やすことで心の元気を取り戻す方法)を中心に行い、次第に考え方や行動のクセにも働きかけていきます。
2. 強迫症(強迫性障害/OCD)
推奨回数の目安:16回
「手を何度も洗ってしまう」「確認行為がやめられない」などの強迫性障害では、曝露反応妨害法という行動療法が中心になります。段階的に不安に慣れていく方法で、安全に進めるために回数は多めに設定されることが一般的です。
3. 社交不安症(社交不安障害/SAD)
推奨回数の目安:12〜16回
人前で話すのが怖い、人と接することが苦手……という社交不安障害には、「自分の思い込み」に気づく練習や、実際の場面での対処行動を一緒に考えることが重視されます。
セッションの中では、「安全な練習の場」をつくることも多いため、一定の回数を要します。
4. パニック症(パニック障害)
推奨回数の目安:21回
突然の動悸や息苦しさに襲われるパニック発作に対するCBTでは、「不安を感じる場面」に少しずつ慣れていく練習(曝露療法)と、「不安を大きくしすぎてしまう思考パターン」の見直しを行います。
継続的に取り組むことで、安心できる行動パターンを増やしていくことが期待されます。
回数は「目安」。自分のペースを大切に
CBTは具体的な目標に向かって進めやすいカウンセリング方法として、さまざまな心の不調に対応しています。上記の回数は、あくまでも一般的な目安です。回数に正解はなく、症状の程度や生活環境、過去の経験などによって、必要な回数は人それぞれ異なります。また、「一度きりの相談」でも、自分の考えを整理できたり、気づきが得られることもあります。
大切なのは、無理のないペースで自分の心に向き合えることです。カウンセラーと一緒に、取り組み方を調整していきましょう。
※本記事は医療行為を目的としたものではありません。心の不調が続く場合は、医師や専門家にご相談ください。
【参考】
- 「うつ病の認知療法・認知行動療法 (患者さんのための資料) 」厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業 「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」
- 「強迫性障害(強迫症)の認知行動療法 マニュアル (治療者用)」厚生労働省
- 「社交不安障害(社交不安症)の 認知行動療法マニュアル (治療者用)」厚生労働省
- 「パニック障害(パニック症)の 認知行動療法マニュアル (治療者用)」厚生労働省