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メンタルヘルスに関連するさまざまな評価尺度

メンタルヘルスの不調を感じたとき、「もしかしてうつ病?」「強迫性障害かも?」と不安になる方は多いかもしれません。この記事では、主な精神的な症状に対して使われる代表的な評価尺度をご紹介します。

あくまでこれらの情報は「医学的な診断をするもの」ではなく、医師などの専門家による評価の際に補助的に用いられる尺度です。ご自身で判断せず、気になる方は専門機関への相談をおすすめします。

うつ病に関連する評価尺度

簡易抑うつ症状尺度(QIDS -J)[1]

自己記入、あるいは自己回答で睡眠、食欲、体重などに関する16 項目の質問に答えることでうつ病の重症度を評価でき、合計点を出すことでうつ状態の変化をみることができます。

ベック抑うつ質問票(BDI-Ⅱ)[2]

13〜80歳を対象とした、自己記入、あるいは自己回答で評価を行います。21項目の気分に関する質問に答えることで、抑うつ症状の重症度を評価することができます。

PHQ-9(Patient Health Questionnaire-9) 

自己記入、あるいは自己回答で評価を行います。過去2週間の気分や行動に関する9項目の質問に、「全くない」「週に数日」「週の半分以上」「ほとんど毎日」の4段階で答えることで、気分の落ち込みや興味・関心の喪失などを評価することができます。

自己評価式抑うつ性尺度(SDS)

自己記入、あるいは自己回答で20項目の質問に4段階で答えることで、うつ症状の程度を評価することができます。

CES-D抑うつ自己評価尺度

一般成人の抑うつ症状を把握する目的で開発された、自己記入式質問票です。過去1週間の気分や行動頻度など20項目の質問に対して4段階(0~3点)で回答し、総得点0~60点で示します。短時間・低コストで実施できるのが特長です。

ハミルトン抑うつ評価尺度(HAM-D 日本語版)

17項目中心の半構造化面接式質問票です。気分・罪悪感・睡眠・食欲・精神運動制止/焦燥などの項目を0〜2点または0〜4点で評定し、総得点0〜52点でうつ症状の重症度を評価します。

老年期うつ病評価尺度(Geriatric depression scale 15)

高齢者のうつ病スクリーニングとして用いられます。15項目の短い質問に「はい」「いいえ」の2段階で答えることで、うつ状態の有無を評価することができます。

児童抑うつ尺度(CDI)

9〜15歳を対象としており、自己記入、あるいは自己回答で評価を行います。27項目の質問に気分や行動を3段階で答えます。抑うつ気分・無価値感・興味喪失などの項目を網羅し、1回10分ほどで実施可能です。

小児用抑うつ自己評価尺度(DSRS-C)

18項目の質問に対して、「いつも」「ときどき」「ない」の三段階で選択し、最近1週間の気分を測定します。小学生低学年から使用でき、実施10分程度と負担が軽いのが特長です。

児童用抑うつ評価尺度改訂版(CDRS-R)

面接者が17項目を7段階で評定し、6〜12歳の抑うつ重症度を客観的に把握することができます。言語応答と非言語所見を組み合わせるため微細な変化を追跡しやすいのが特長です。

気分と感情に関する質問票(MFQ/SMFQ)

原版のMFQは33項目、短縮版SMFQは13項目で7〜17歳を対象としています。自己版と養育者版があり、過去2週間の抑うつ症状を3段階で記入します。項目が少なく回答が容易なため学校・地域調査に適しているとされています。

児童用CES-D(CES-DC)

CES-Dの子ども版で、20項目4段階評価により抑うつ症状の頻度を測定します。面接を必要とせず集団実施が容易で、簡便なスクリーニング指標として注目されています。

強迫症(強迫性障害/OCD)に関連する評価尺度

イェール・ブラウン強迫尺度(Y-BOCS)

半構造化面接形式の評価尺度です。10項目で、強迫観念・強迫行為それぞれの「時間」「苦痛」「支配度」などを0~4点で評定し、合計40点で重症度を判定します。症状リストを併用することで個人の症状を明確にすることができます。

児童用イェール・ブラウン強迫尺度(CY-BOCS)

Y-BOCSを6~17歳向けに再構成した面接尺度で、子ども自身と保護者双方から情報を得ながら症状の重症度を測定します。日本語版は学校適応や行動療法の効果判定にも用いられています。

強迫症状質問票改訂版(OCI-R)

自己記入式の評価尺度です。「洗浄」「確認」「秩序」「こだわり」「数唱」「回避」の6領域を18項目5段階評価し、0~72点の合計点でどの症状がどれだけ生活に影響を与えているかを把握します。実施時間は約5分と短く、実施しやすいのも特長です。

ディメンジョナルY-BOCS(DY-BOCS/強迫症状次元評価尺度)

Y-BOCSの長所を活かしつつ、「攻撃・確認」「性・宗教」「対称・整頓」「汚染・洗浄」「溜め込み」「その他」の6次元を個別に0~15点で測定する面接尺度です。症状ごとの重症度を可視化できるのが特長です。

フロリダ強迫症状質問票(FOCI)

20項目の症状チェックリストと、5項目の重症度評価からなる自己記入式の評価尺度です。合計数分で実施でき、症状有無のスクリーニングから治療モニタリングまで汎用性が高いのが特長です。対面が難しい場面でも導入しやすい簡易尺度として紹介されています。

モーズレイ強迫神経症質問紙(MOCI)

30項目の質問に、「はい」「いいえ」の二段階で答え、「確認」「洗浄」「疑惑・思考」の3領域を評価します。回答負担が軽く、短時間で傾向を把握することができます。

社交不安症(社交不安障害SAD)に関連する評価尺度

リーボヴィッツ社交不安尺度(LSAS)

24項目の社交場面・行為場面について、「不安度」と「回避度」を0~3点で評定し、0~144点で重症度を把握します。実施時間は約10分です。

社交場面恐怖尺度(SPS)

他者から「見られる」状況への恐怖を測定する、20項目の自己記入式の評価尺度です。特に人前で発表や演技をする場面への恐怖評価に適しています。

社交的相互作用不安尺度(SIAS)

一般的な対人交流の不安を測る20項目の自己記入式評価尺度です。SPS-Jと補完的に用いることで、SADの異なる側面(交流 vs. 観衆)を詳しく把握することができます。

対人評価恐怖短縮版尺度(B-FNE)

他人から否定的に見られるのではと心配する度合いを測る、12項目の質問による評価尺度です。「まったくない」〜「とても当てはまる」を5段階で答え、数分で完了します。社交不安障害の程度や治療効果の変化を客観的に把握できます。

注意欠如多動症(ADHD)に関連する評価尺度

コナーズ成人ADHD評価スケール(CAARS)

18歳以上を対象とする自己・他者記入式66項目の質問票です。「まったく当てはまらない」〜「非常に当てはまる」の4段階で回答し、注意散漫、落ち着きのなさ、衝動性、自己概念の問題など4領域と総合指標で症状の程度を数値化します。所要15〜30分と簡便で、医療現場で広く用いられています。

Conners 3 日本語版〈コナーズ3〉

保護者・教師・本人の三者が回答する質問紙です。注意力、衝動性、対人関係などを多角的に把握でき、日本語版は6〜18歳が対象。得点は国際的標準値と比較され、症状の程度や治療経過を丁寧に検討できます。

ADHD評価スケール-IV(ADHD RS-IV)

DSM-IV基準18項目を基に、保護者や教師が子どもの日常行動を0〜3点で評価する質問紙です。不注意と多動・衝動の2領域の合計点で症状の重さを数値化し、約10分で実施できます。診断前のスクリーニングや薬物・行動療法の効果判定に広く用いられますが、結果は専門家が他情報と併せて総合判断する必要があります。

成人期ADHDセルフレポートスケール〈ASRS-v1.1 日本語版〉

成人向け自己記入式。過去6か月の行動を六つのコア項目で簡易判定し、詳細版では18項目を用いて重症度も把握可能です。職場や大学など成人期特有の困りごとに焦点を当てています。

バンダービルトADHD診断評価スケール

6~12歳の子どもの行動を、保護者版55項目・教師版47項目で4段階評価する質問紙です。DSM基準18項目で不注意と多動/衝動の頻度を点数化し、学業・家庭生活の支障も併せて評価できるため、症状の強さと日常機能を同時に把握できます。反抗挑戦症・素行症・不安抑うつの簡易スクリーニングも含まれており、約10分で実施可能です。

自閉症スペクトラム症(ASD)に関連する評価尺度

ADOS-2 自閉症診断観察検査(日本語版)

訓練を受けた評価者が半構造化の遊び・会話場面を観察し、社会性・コミュニケーション・想像力などを総合判断します。幼児から成人まで5モジュールあります。

ADI-R 自閉症診断面接 改訂版(日本語版)

養育者への半構造化インタビューで、幼少期から現在までの行動特徴を詳細に聴取します。社会的相互作用、コミュニケーション、常同行動の3領域を網羅し、診断や研究で広く用いられます。

自閉症スペクトラム指数〈AQ 日本語版〉

10歳以上を対象とした自己記入、あるいは自己回答式の評価尺度です。社会的スキル、注意の切り替え、詳細志向などについて50項目の質問で構成され、簡便に自閉特性の傾向を把握できます。

SRS-2 対人応答性尺度(日本語版)

保護者や教師が子どもの普段の行動を65項目・4段階で評価し、自閉スペクトラム症に関連する社会的やり取りの困難さを数値化する検査です。15〜20分で実施でき、スクリーニングや介入効果の確認に広く用いられます。

パニック症(パニック障害)に関連する評価尺度

パニック障害重症度評価尺度(PDSS)

専門家が面接で7項目を0~4点で評定し、総得点0~28点で症状の強さを示す検査です。過去1か月のパニック発作の頻度と、苦痛、予期不安、広場恐怖による回避、仕事・社会生活への支障までを網羅し、実施は約10分です。

パニック障害・広場恐怖尺度(PAS)

患者または臨床家が回答する40項目の詳細版と、症状領域別にまとめた短縮版があり、パニック発作頻度、予期不安、回避、健康への懸念などを包括的に測定します。

【注意事項】これらの検査はあくまで「目安」

ここで紹介した各検査尺度は、正式な診断を下すものではなく、症状の傾向や重症度を評価するための「参考ツール」です。診断や治療は医師または専門の臨床心理士・公認心理師が行います。

また、この記事は特定の治療法や薬剤の効果を保証するものではなく、医療行為を推奨するものではありません。

【参考】

  1. うつ病チェック」(厚生労働省)
  2. Beck Depression Inventory (ベックうつ病調査表)」(医療法人社団松伯会山王クリニック)
  3. PHQ-9 日本語版(JSAD 版)」日本不安症学会
  4. うつ病|セルフチェック|初期・軽度・中等度・重度の症状|リハビリテーション通信」(医療法人松風会江藤病院)
  5. 高齢者のうつ予防」(国立長寿医療研究センター)
  6. 自己記入式 YALE-BROWN 強迫観念・強迫行為評価スケール (Y-BOCS)日本語版」(日本不安症学会)
  7. 社交不安症の診断と評価」朝倉聡(『不安症研究』2015 年 7 巻 1 号 p. 4-17)
  8. 注意欠如多動症(ADD,ADHD)」MSDマニュアルプロフェッショナル版
  9. パニック障害重症度評価尺度」名古屋市立大学医学部精神医学講座(2001)
  10. 社交不安障害(社交不安症)の 認知行動療法マニュアル (治療者用)
  11. パニック障害(パニック症)の 認知行動療法マニュアル (治療者用)

監修:山田カウンセラー 公認心理師、臨床心理士
【得意なジャンル】
人間関係、親子関係、落ち込み、不安、子ども