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社交不安症の治療法:薬物療法と認知行動療法(CBT)

社交不安症の治療法:薬物療法と認知行動療法(CBT)

「会議で発言するのが怖い」「周りの目が気になって自分らしくいられない」――

こうした悩みは、決してあなたの性格が弱いからではありません。 その症状が長期間続き、日常生活や仕事、学業に大きな支障をきたしてしまう場合、「社交不安症(Social Anxiety Disorder:SAD)」の可能性があります。

この記事では、社交不安症と上手につきあい、少しずつ自分らしい毎日を取り戻すための 薬物療法認知行動療法(CBT) についてわかりやすく解説します。
初めて症状に向き合う方や、ご家族・友人が悩んでいる方にとっても役立つ情報になるでしょう。

💡この記事のポイント:

  • 主なアプローチ: 不安を抑える薬の活用と、段階的に自信をつける心理療法。
  • 日常の工夫: 睡眠の改善、リラクゼーション、小さな成功体験の積み重ね。
  • サポートツール: 専門家への相談に加え、疾患理解アプリ『フアシル-S』などの活用も有効です。 一人で抱え込まず、適切なサポートを通じて「不安があっても自分らしく振る舞える状態」を目指しましょう。

社交不安症とは?

社交不安症(Social Anxiety Disorder)は、人と接する場面や人前での行動に対して、過剰な不安や恐怖を感じる精神疾患です。
以前は「社会不安障害」とも呼ばれていました。

単なる恥ずかしがり屋や内気な性格とは異なり、不安が強すぎて生活に支障が出るほどになるのが特徴です。

主な症状

1. 人前で強い緊張を感じる

  • 発表やスピーチ、自己紹介のときに動悸や息苦しさが起こる
  • 声が震える、手が震えるなどの身体症状が出る
  • 事前から何日も「うまく話せなかったらどうしよう」と考え続けてしまう

2. 見られているときの身体反応

  • 顔が赤くなる(赤面)
  • 手汗や発汗が止まらない
  • 頭が真っ白になり言葉が出てこない

3. 恥をかくことへの強い恐怖

  • 「笑われたらどうしよう」「変に思われるのでは」と強く心配する
  • 人前で食事や電話をすることさえ避けるようになる

4. 回避行動による生活への影響

  • 会議、飲み会、学校行事などを欠席してしまう
  • 人間関係が広がらず孤独感が強くなる
  • 仕事や学業のパフォーマンスが下がる

心理的な背景

社交不安症の人は、「自分がどう見られているか」にとても敏感です。
「失敗したらどうしよう」「嫌われたらどうしよう」という考えが頭から離れず、

  • 自分の動作や表情を常にチェックしてしまう
  • 他人の表情や反応を過剰に気にしてしまう

といった状態になります。
結果として、人前の場面を避けるようになり、短期的には不安が和らぎますが、避ければ避けるほど不安が強まるという悪循環に陥ります。

恥ずかしがり屋や内気との違い

恥ずかしがり屋・内気社交不安症
不安の強さ軽度〜中程度生活に支障が出るほど強い
回避行動その場で緊張するが参加はできるイベントや会議自体を避ける
持続時間場面が終われば落ち着く事前から数日〜数週間悩み、終わった後も反芻する
生活への影響限定的学業・仕事・人間関係に深刻な影響

社交不安症は「性格のせい」ではなく、脳の不安システムが過剰に反応している状態です。

早めに気づいて対処することで、日常生活の制限を減らし、対人関係やキャリアを取り戻すことが可能です。

社交不安症の治療法:薬物療法と認知行動療法(CBT)

社交不安症は「性格の問題」ではなく、脳や心の不安システムが過剰に反応している状態です。
そのため、適切な治療を受けることで多くの人が症状を軽減し、生活を取り戻せます。

治療の基本方針

社交不安症の治療では、

  1. 不安を和らげる(薬物療法)
  2. 不安への考え方や行動パターンを変える(認知行動療法)

この2本柱で進めることが一般的です。
薬で心の負担を減らしつつ、心理療法で根本的な考え方や行動を整えていくと、長期的に安定した改善が期待できます。

薬物療法

社交不安症の治療では、強い不安や緊張を抑えるために、薬を活用することがあります。
これは根性で治すのではなく、脳内の神経伝達物質のバランスを整えることで、不安の波を穏やかにするためのサポートです。

  • 主な種類(SSRIなど):  社交不安症の治療では、一般的に「SSRI」と呼ばれるタイプの薬などが検討されます。これらは脳内のセロトニンの働きを助け、過剰な不安を感じにくくする役割を担います。
  • 医師との相談が不可欠: 薬の種類や量は、一人ひとりの症状や体質に合わせて医師が慎重に判断します。効果が出るまでに数週間かかることもあるため、焦らず医師と相談しながら進めていくことが大切です。

メリットと注意点

メリット注意点
不安症状を比較的早く和らげることができる副作用(眠気、吐き気、倦怠感)が出る場合がある
学校や仕事を続けながら治療を進めやすい効果が出るまで数週間かかることがある
CBTへの取り組みを助ける自己判断で中断すると再発しやすい

ポイント:薬は不安をゼロにする魔法ではありませんが、心に余裕を作ることで、次のステップである「練習(CBT)」に取り組みやすくしてくれます。

認知行動療法(CBT)

認知行動療法(CBT)は、「考え方のクセ」と「行動」を少しずつ変えていく、科学的根拠に基づいた方法です。

CBTの基本的な考え方

社交不安症では、「失敗したら笑われる」「赤面したら嫌われる」など、実際よりも厳しい考え方(認知のゆがみ)が不安を強めています。
CBTでは、こうした考え方を現実的に修正し、不安を避けずに少しずつ行動する練習を行います。

主な方法

  • 認知再構成法
    不安を生む考え方を書き出し、よりバランスの取れた考え方に置き換える。
    例:「赤面したら嫌われる」→「赤面しても多くの人は気にしない」
  • 曝露療法(エクスポージャー)
    不安を感じる場面に段階的に挑戦する。
    例:まずは友人と短い会話 → 少人数で発言 → 会議で話す → 人前でスピーチ
    → 「思ったより恐ろしくなかった」という経験を重ね、不安が和らぐ。
  • 社会スキルトレーニング(SST)
    挨拶や自己紹介、会話の切り出し方を練習し、人前での自信を高める。

CBTの効果

  • 症状の改善効果が高い
  • 再発を防ぐ効果がある
  • 薬をやめた後もスキルが残る

ポイント: CBTは「不安をなくす」よりも、「不安があっても行動できるようになる」ことを目指します。

薬物療法とCBTの併用

  • 薬で不安を軽減CBTで行動を広げる
    というステップで進めると、効果が長続きしやすいです。
  • 不安が強くて行動練習に取り組めないときは薬を先行、
    徐々に薬を減らし、心理療法中心に切り替えるケースもあります。

治療を始めるタイミング

  • 不安や緊張のために学校・仕事・人付き合いを避けてしまう
  • 生活の質(QOL)が大きく下がっている
  • 自分ではコントロールできず、日常生活に支障がある

こうした場合は、心療内科や精神科への受診が推奨されます。

社交不安症は、薬と心理療法をうまく組み合わせることで改善が期待できる症状です。
薬は不安を和らげるサポート役、CBTは不安に立ち向かうトレーニング。
両方を取り入れることで、長期的に「不安に振り回されない自分」を取り戻すことができます。

日常生活でできる工夫

社交不安症の治療は、薬やCBT(認知行動療法)だけでなく、日常の生活習慣を整えることも大切です。
日々の小さな工夫が、不安を和らげる土台となり、回復をサポートします。

1. 睡眠と食生活を整える

睡眠

  • 毎日できるだけ同じ時間に寝起きする
  • 寝る前のスマホ・PCは控え、脳を休める
  • 寝る前の深呼吸やストレッチで体をリラックスさせる

→ 睡眠不足は脳の不安システムを敏感にし、緊張やイライラを増幅します。安定した睡眠は心の回復に欠かせません。

食生活

  • バランスの良い食事(タンパク質・ビタミンB群・鉄分を意識)
  • カフェインやアルコールを摂りすぎない(不安を悪化させることがあります)

→ 体調が整うと、気持ちの波も安定しやすくなります。

2. 適度な運動を取り入れる

ウォーキングやストレッチなど、軽い有酸素運動は不安を和らげる効果があります。

  • 1日15〜30分の散歩
  • ヨガやストレッチ
  • 音楽に合わせた軽い体操

運動すると脳内でセロトニンやエンドルフィンが分泌され、気持ちが落ち着きやすくなります。

3. 不安を一人で抱え込まない

  • 信頼できる家族や友人に、不安な気持ちを話す
  • 必要に応じてカウンセラーや支援機関に相談する

「誰かに話す」ことで、気持ちが整理され、安心感が生まれます。
また、周囲が理解してくれると、人前に出る練習もしやすくなります。

4. リラクゼーション法を実践する

深呼吸

  • 息を4秒かけて吸い、6秒かけて吐く
  • お腹がふくらむのを感じながらゆっくり呼吸

→ 自律神経が整い、体の緊張がほぐれます。

マインドフルネス

  • 今の呼吸や感覚に注意を向ける練習
  • 「不安を消そうとする」のではなく、「不安がある自分をそのまま受け止める」姿勢を養う

→ 不安が出ても慌てず受け流せるようになります。

5. 小さな成功体験を積み重ねる

  • 少人数で一言だけ発言してみる
  • お店で注文を声に出してみる
  • 会議で短く意見を言ってみる

→ 「できた」という体験を少しずつ増やすことで、自信が回復していきます。

ポイント

これらの工夫は薬やCBTの効果を高める“生活の土台”になります。
一気に全部やる必要はなく、できそうなものから一つずつ取り入れることが大切です。

まとめ

社交不安症は、決して珍しい病気ではありません。日本では人口の数%が経験するといわれ、誰にでも起こり得る症状です。
ただの恥ずかしがり屋や内気と違い、放置すると不安がますます強くなり、学校や仕事、人間関係を避けるようになってしまう可能性があります

治療の2本柱

  • 薬物療法
    → 不安や緊張を和らげ、生活を立て直す土台づくり
  • 認知行動療法(CBT)
    → 「失敗したらどうしよう」という考え方のクセを修正し、行動できる自分に変えていく根本的なアプローチ

両方を組み合わせることで、短期的には症状を軽減し、長期的には再発を防ぐことが期待できます。

早めに相談するメリット

  • 不安や回避行動が広がる前に対処できる
  • 仕事や学校を休まずに済む可能性が高くなる
  • 治療期間が短くなるケースもある

「症状が軽いうちに相談する方が、回復への道がスムーズ」です。

自分に合った方法を選ぶことが大切

治療には選択肢があります。

  • 薬はどれくらい使うか
  • CBTは個別かグループか
  • どんなペースで進めるか

医師や心理士と相談しながら、自分のライフスタイルに合った方法を選ぶことが、長く続けるコツです。

前向きな一歩を踏み出そう

社交不安症は、適切な知識とサポートがあれば、回復の道を歩める症状です。

  1. 早めに相談: 症状が重くなる前に、専門機関を頼りましょう。
  2. 焦らず一歩ずつ: 薬やCBT、そして日常のセルフケアを組み合わせて、自分のペースで進みましょう。
  3. ツールを味方に: 疾患について知るための『フアシル-S』などのアプリを活用するのも、大きな一歩です。

不安が完全にならなくても、あなたらしく笑える時間はきっと作れます。今日からできる小さなことから、一緒に始めてみませんか?

社交不安症について気になった方は

以下のページにて社交不安症について詳しく解説しています。

『社交不安症ってどんな病気?——「あがり症」「対人恐怖」「人見知り」とのちがいをやさしく解説』

※本記事は、社交不安症に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断・治療・助言を代替するものではありません。
症状や治療、支援については、必ず医師や専門家にご相談ください。

社交不安症について知るアプリ『フアシル S』

社交不安症について知るアプリ『フアシル-S』は、兵庫医科大学精神科神経科学、東北学院大学人間科学部と共同研究にて開発したアプリです。

推奨用途:中学生〜新社会人などあがり症、人見知りの方への対処法の疾患理解の促進

iOSアプリダウンロード:https://bit.ly/fuasil_s_app

Androidアプリダウンロード:https://bit.ly/fuasil_s_google

※当アプリは診断や治療など医療行為・医療類似行為ではなく、疾患について知ることを目的としています。疾患の診断・治療をご希望の方は、医師の診断および治療をお受けください。

『フアシルS』についてはこちら

参考文献一覧

  1. 日本うつ病学会. うつ病治療ガイドライン. 日本うつ病学会, 2020.
  2. 厚生労働省. こころの病気について(社交不安症). https://www.mhlw.go.jp/
  3. American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition (DSM-5). American Psychiatric Publishing, 2013.
  4. National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Social anxiety disorder: recognition, assessment and treatment. NICE Clinical guideline [CG159], 2013.
  5. Hofmann SG, Smits JA. Cognitive-behavioral therapy for adult anxiety disorders: A meta-analysis of randomized placebo-controlled trials. Journal of Clinical Psychiatry, 2008.
  6. Mayo Clinic. Social anxiety disorder (social phobia) – Diagnosis and treatment. https://www.mayoclinic.org/

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