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ADHDの子どもとの向き合い方:家庭でできるサポート方法

「何度言っても聞いてくれない」「落ち着きがなくて目が離せない」――日々の子育ての中で、つい感情的に叱ってしまい、後で自分を責めてしまうことはありませんか?

ADHD(注意欠如・多動症)は、不注意、多動性、衝動性といった特徴がみられる発達特性であり、原因は性格や育て方ではありません。

子どもがわざと困らせているのではなく、脳の働きによって「わかっていても行動をコントロールしにくい」状態にあるのです。

医学的には、子どもの行動をサポートする「行動療法(ペアレントトレーニング等)」、学校での支援、そして必要に応じた薬物療法を組み合わせることが推奨されています。 この記事では、子どもの特性を理解し、親子が笑顔で過ごせる工夫について紹介していきます。

💡この記事のポイント:

  • 特性の理解: ADHDは「しつけ」や「親の育て方」のせいではなく、脳の働きによる発達特性。 
  • ほめて伸ばす: 叱るよりも、できた瞬間に「具体的にほめる」ことが、良い行動を定着させる近道。 
  • 環境の工夫: 指示を短く視覚化したり、ルーティン化したりすることで、子どもが「自分でできる」環境を整える。
  • 専門家との連携: 家庭だけで抱え込まず、学校や医療機関、便利なサポートツールを適切に組み合わせて支援する。

家庭ですぐ始められる「基本の5本柱」

ADHDの子どもは、集中のしにくさや衝動性のために「叱られる経験」が増えがちです。
だからこそ、良い行動を伸ばす仕組みと、見通しの持てる環境づくりがポイントになります。
ここでは親訓練(Parent Training)や行動療法で推奨される「5本柱」を、家庭で実践できる形にまとめました。

1)良い行動をすぐほめる(ポジティブな注目)

  • なぜ大切?: 人は叱られるより、ほめられる方が行動が定着しやすいことがわかっています。
  • 実践: 「席に30秒座れた」「ノートを出せた」など、当たり前と思えるような小さな成功を、その場ですぐに具体的に(例:「すぐノートを出せて助かったよ!」)ほめましょう。

NG例:できていないときに「どうしてできないの」と言うより、できたときに注目してほめるほうが行動が増えます。

2)指示は短く・1つずつ・目で見える形で

  • なぜ大切?: 長い説明や一度に複数の指示を覚えるのが苦手な場合があります。
  • 実践: 「ノート出して」など3語以内の短い言葉で伝えたり、やる順番を絵カードやチェックリストで見える化したりすると、子どもが動きやすくなります。

家庭と学校で同じ方法を使うと、子どもが混乱せずに行動を学びやすいです。

3)ルーティンとタイマーで「見通し」を作る

  • なぜ大切?: 時間の感覚をつかむのが苦手で、急な切り替えに混乱しやすい特性があります。
  • 実践: 朝や寝る前の手順を固定化しましょう。視覚タイマー(残り時間が色で見えるもの)を「お知らせ」として使うと、切り替えがスムーズになります。

視覚タイマー(残り時間が色や円で見えるタイプ)が特に効果的。

4)「〜しない」を「〜しよう」に置き換える

  • なぜ大切?: 「やめなさい!」だけでは、次に何をすればいいかが伝わりません。
  • 実践: 「走らない」ではなく「歩こう」、「割り込まない」ではなく「順番を待とう」と、望ましい行動を具体的に示します。

望ましい行動ができたら、すぐにほめて「次もやろう」という気持ちを育てます。

5)小さなごほうび(トークン)でやる気を継続

  • なぜ大切?: 長期的な目標よりも、目の前の「小さな達成感」に強く反応します。
  • 実践: 目標ができたらシールを貼り、たまれば「好きな本を読む」などの小さなごほうび(特権)と交換します。 失敗してもポイントを減らさず、やる気を維持することがコツです。

達成までのハードルは短期設定(1日~数日)にして成功体験を積みやすくする。

家庭でできるサポートの基本は、

  • 良い行動に注目してほめる
  • 指示は短く・視覚化する
  • ルーティンで流れをつくる
  • 禁止ではなく置き換え行動を教える
  • 見える報酬で継続を後押しする

という5本柱です。

これは親子関係を良くするだけでなく、学校生活や将来の自己管理スキルにもつながります。
叱る回数を減らし、「できた!」を増やす関わり方を家庭から始めてみましょう。

年代別のヒント

お子さんの成長段階に合わせて、関わり方を少しずつ変化させていきましょう。

  • 未就学児(〜5歳): 親向けの行動トレーニング(ペアレントトレーニング)が第一選択とされています。 絵カードなどを使って、遊びの中で成功体験を積みましょう。
  • 小学生: 宿題を「10分×2セット」に分けるなど、集中が続く工夫を。 学校と家庭で提出物の置き場所を揃えるなど、ルールを共有すると混乱を防げます。
  • 思春期: 親は「監督」から「コーチ」へ。 本人が自分で目標を立てたり、振り返ったりする自己管理スキルを一緒に考えていく時期です。 

学校との連携:一貫した支援が力になる

  • 先生と簡単な支援計画を共有(指示を短く、席の工夫、課題の分割、提出チェックなど)。
  • 連絡ツール(連絡帳・アプリ)で、家庭と学校のほめるポイントをそろえる。
  • AACAP(米国小児思春期精神医学会)の親向けガイドでも、学校での配慮を早期から勧めています。

生活リズム:睡眠・運動・デジタル

睡眠と運動

  • 寝る前の一連の手順を固定(入浴→歯→本→就寝)。
  • 日中の有酸素運動は集中の助けに。短時間でも毎日が◎。

スクリーンタイム

AAP(米国小児科学会)は、18か月未満はビデオ通話を除きメディアを最小化、就学前は高品質な番組を1日1時間程度に、学齢期は家族でルールを話し合い、睡眠・運動・学習を優先と提案しています。まずは就寝前1時間は画面オフから。

よくある質問(FAQ)|ADHDの子育て

Q1. 厳しく叱らないと、わがままな子になりませんか?

A1. 叱りすぎると、お子さんの自己肯定感が下がり、かえって反抗的になったり意欲を失ったりすることがあります。 「わがまま」ではなく「特性による苦手さ」と捉え、適切なサポート(環境調整)を行うことが、結果的にお子さんの自律的な行動を育てます。

Q2. サプリメント(オメガ3など)は効果がありますか?

A2. オメガ3などの脂肪酸に関する研究は行われていますが、現在のところ効果は限定的とされています。 まずは、国際的なガイドラインでも推奨されている「行動療法(環境調整)」や、必要に応じた専門的な治療を優先することをお勧めします。

Q3. どのタイミングで受診を検討すべきですか?

A3. 家庭や学校など、複数の場面でお子さん自身や周囲が困りごとを感じ、生活に支障が出ている場合は、早めの受診をお勧めします。 早期の評価と家族への支援は、二次的な心の不調を防ぐことにもつながります。 小児科や児童精神科、発達外来などにご相談ください。 

1週間お試し“家庭プラン”

「毎日どう接したらいいかわからない」「やり方を決めても続かない…」という声はよくあります。
そこで、ADHDの子どもに向けた家庭でのサポート方法を、1週間だけ試せる形にまとめました。
目的は「親子が無理なく続けられる流れ」をつくることです。ポイントは短い行動ステップ成功体験の見える化
以下はあくまで例なので、お子さんや家庭の生活リズムに合わせて調整してください。

月–金(共通)

  1. 朝の3手順(起床→支度→出発チェック)を絵カードで表示
  2. 帰宅後は5分休憩→宿題10分→休憩5分のサイクル×2
  3. できたらシール。5枚で“親子ゲーム10分”

就寝前

  • お風呂→歯→本→画面オフ→就寝(毎晩同じ順)

週末

  • 家族会議10分:できたことを3つ言葉でほめる/来週の“1つの目標”を決める。

まとめ

ADHDの子どもは、本人なりに一生懸命頑張っていても、周囲とのギャップに苦しんでいることがあります。

  • ほめる
  • 短く伝える
  • 見える化する
  • 区切る
  • 置き換える

この5つの関わり方を通じて、子どもの「できた!」を一つずつ増やしていきましょう。
親が一人で抱え込まず、学校や専門家、時には便利なアプリなどのツールを頼ることは、決しておかしいことではありません。
あなたが少しでも楽な気持ちで向き合えることが、子どもの力を引き出す一番の近道です。 

認知行動療法について気になった方は

以下のページにて認知行動療法について詳しく解説しています。

疾患別・認知行動療法(CBT)の代表的手法ガイド

※本記事は、ADHDに関する一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断・治療・助言を代替するものではありません。
症状や治療、支援については、必ず医師や専門家にご相談ください。

参考文献一覧

  • NICE. NG87: Attention deficit hyperactivity disorder: diagnosis and management(未就学児は親向け行動訓練が第一選択 ほか). 最終レビュー:2025年5月7日。NICE+1
  • AAP(米国小児科学会). Clinical Practice Guideline for the Diagnosis, Evaluation, and Treatment of ADHD in Children and Adolescents(2019:6歳以上は薬+行動療法、学校支援の併用). AAP PublicationsPubMed
  • CDC(米国疾病予防管理センター). Parent Training in Behavior Management / Treatment of ADHD(親訓練の推奨、年齢別の治療方針、学校との連携). 更新:2024年5月。CDC+1
  • AAP(HealthyChildren.org / CoE). Screen Time / Media Use guidance(年齢別メディア利用の考え方、家族での合意形成). 更新:2023–2025年。HealthyChildren.orgアメリカ小児科学会
  • AACAP/APA. ADHD Parents’ Medication Guide(家庭向けの薬物療法ガイド、服薬・副作用管理ツール). AACAP精神医学協会
  • Cochrane Review. Polyunsaturated fatty acids (PUFA) for ADHD(オメガ3等の効果は全体として限定的). 2023年。PubMedCochrane Librar

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