「人に合わせすぎて疲れてしまう」「相手の意見に振り回されて、自分の気持ちがわからなくなる」──そんな悩みを抱えていませんか?
私たちは社会の中で生きている以上、人との関わりを避けることはできません。けれども、自分の価値観や行動指針を持たないまま人に合わせ続けると、心が疲弊し、ストレスや不安を強く感じるようになります。
そこで大切なのが、「自分が大切にしたい価値」を明確にすることです。
この記事では、価値観を見つける方法や、それを行動指針として活かす具体的なステップをわかりやすく解説します。
「自分が大切にしたい価値」とは?
「価値」とは、あなたが人生で大事にしたいもの、優先したいもののことです。
お金やモノのように手に入れて終わりではなく、生きていくうえでずっと大切にしていきたい指針のようなものです。
目次
価値は一人ひとり違う
価値は人によってまったく異なります。
例えば、次のようなものが考えられます。
- 家族や友人との時間を大切にする
→ 忙しくても週末は家族と過ごす時間を作る - 誠実でありたい
→ 嘘をつかず、約束を守るよう心がける - 挑戦し続けたい
→ 失敗を恐れず、新しい仕事や趣味にチャレンジする - 健康を守ること
→ 食事や睡眠の習慣を見直し、体調を整える - 学びや成長を楽しむ
→ 本を読む、勉強する、自分をアップデートする
同じ「家族が大事」という価値でも、「一緒に旅行に行きたい人」もいれば「毎日会話をすることを大事にする人」もいます。
価値は“正解”があるものではなく、あなたの心が本当に求めている方向を示すコンパスのようなものです。
価値を意識するとどう変わる?
自分にとって大切な価値がわかると、次のような変化が起こります。
- 「何を優先すべきか」が明確になる
→ やるべきことが多いときも、価値に沿って選択できる - 人に振り回されにくくなる
→ 他人の期待よりも、自分が納得できる選択ができる - モヤモヤが減る
→ 「やらされ感」よりも「自分で選んだ感覚」が増える
たとえば、あなたの価値が「家族との時間を大切にする」なら、残業や休日出勤の誘いを断る判断がしやすくなります。「本当にやりたいこと」に時間とエネルギーを使えるようになるのです。
自分の価値を見つける簡単ワーク
価値を知るために、次のような質問を考えてみましょう。
- 「どんなときに一番うれしい気持ちになる?」
- 「どんなときに強くイライラしたり悲しくなる?」
- 「自分の人生で後悔したくないことは何?」
- 「尊敬する人のどんな生き方が好き?」
イライラやモヤモヤの裏側にも、自分が本当に大事にしたい価値が隠れています。
たとえば「約束を守られないと腹が立つ」なら、それはあなたが「誠実さ」を大事にしているサインです。
価値は行動のヒントになる
価値はゴールではなく、行動の方向性を示すものです。
- 「健康を守る」という価値 → 夜更かしを控えて、早めに寝る
- 「挑戦を大事にする」という価値 → 苦手な分野の仕事にも一歩踏み出してみる
行動が価値と一致していると、結果がどうであれ充実感が得られます。
逆に、価値に反した行動が続くとストレスや疲れがたまりやすくなります。
なぜ価値を明確にすると人に振り回されなくなるのか?
人に振り回されやすい人は、無意識のうちに次のような思い込みにとらわれていることが多いです。
- 「相手を優先しなければいけない」
- 「嫌われないようにしなければいけない」
- 「期待に応えないとダメな人だと思われる」
これらの思い込みは一見「やさしさ」や「思いやり」のように見えますが、行き過ぎると**相手中心の人生(他人軸)**になってしまいます。すると、次のような状態が起こりやすくなります。
- 相手の機嫌で気分が左右される
- 自分の本音がわからなくなる
- 断れない、我慢ばかりになる
- 結果的に疲れ切ってしまう
「価値」がコンパスになる
自分の価値がはっきりすると、心の中に**行動のコンパス(方位磁針)**ができます。
たとえば、あなたが「健康」を大切にしていると自覚していれば、
- 残業を頼まれたときも「今日は休養が必要だから断ろう」と決めやすくなる
- 「体を壊すほど無理するのは、自分の価値と合わない」と判断できる
つまり、他人の期待ではなく自分が大切にしたいものを基準に選べるようになるのです。
価値が明確になると起こる変化
- 自分の判断基準ができる
→「この行動は、自分の大事にしている価値に合っているか?」と問い直せる - 選択の迷いが減る
→ 周囲の意見がバラバラでも、自分にとって正しい選択が見えやすい - 人に流されにくくなる
→ 相手の反応より、自分が納得できる選択を優先できる
これは、心理療法のひとつである**アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)**でも重視される考え方です。
ACTでは、価値を明確にしてその方向に行動することを「価値に基づく行動」と呼び、人生の満足感や意味を高める重要なステップとしています。
日常生活でのイメージ
- 場面1:友人から急な誘いを受けたとき
価値が不明確だと「断ったら嫌われるかも」と悩み、無理して参加して疲れてしまう。
価値が明確だと「今日は家族との時間を優先したいから断ろう」と決められる。 - 場面2:職場で意見が対立したとき
価値が不明確だと「どっちに合わせるべき?」と不安になる。
価値が明確だと「誠実さを大事にしているから、自分の考えを正直に伝えよう」と選べる。
自分が大切にしたい価値を見つける方法
1. 過去の経験を振り返る
- どんなときに「幸せだな」と感じたか?
- 逆に「もう二度としたくない」と思った経験は?
この問いを通じて、自分の価値観のヒントが見えてきます。
2. 憧れる人から探す
「この人の生き方に共感する」と思う人の特徴を書き出してみましょう。
その人が体現しているものが、あなたの大切な価値かもしれません。
3. 価値リストから選ぶ
心理学やカウンセリングで使われる価値リストには、以下のような項目があります。
- 誠実
- 自由
- 愛情
- 挑戦
- 創造性
- 学び
- 健康
- 社会貢献
この中から「自分にとって大事だ」と感じるものを3つほど選んでみましょう。
価値を行動指針に落とし込むステップ
ステップ1:価値を言語化する
例:
「健康を大切にしたい」
「家族との時間を大事にしたい」
ステップ2:日常の行動に変換する
- 健康 → 毎日30分のウォーキングをする
- 家族 → 週末は必ず一緒に夕食をとる
ステップ3:選択の基準にする
- 「仕事を優先すべきか、家族との時間を優先すべきか」と迷ったら、価値を基準に決める。
- 「本当に自分が大切にしたいものはどちらか?」と問い直す。
価値に基づいて生きるとどう変わる?
価値を意識した生活は、次のような変化をもたらします。
- 人に合わせすぎて疲れることが減る
- 自分の人生に納得感が生まれる
- ストレスが減り、精神的に安定する
- やりたいことを実現しやすくなる
これは心理療法のひとつである「アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)」でも重視されており、価値に基づいた行動は人生の充実感を高めるとされています。
人に振り回されやすい人へのアドバイス
- 「相手がどう思うか」よりも「自分はどうしたいか」に注目する
- 無理に相手に合わせるのではなく、自分のペースを守る
- NOと言えるように練習する
- 小さなことでも「価値に沿った行動」を積み重ねる
人に優しくすること自体は素晴らしいことですが、自分を犠牲にしてまで合わせる必要はありません。
「自分も大切にする」ことを忘れないでください。
まとめ
行動指針となる「自分が大切にしたい価値」を考えることは、人に振り回されず、自分らしく生きる第一歩です。
- 価値観を明確にすると、自分軸ができる
- 過去の経験や憧れる人から価値を見つけられる
- 価値を日常の行動に落とし込むことで、迷いが減る
「私はどんな価値を大切にしたいのか?」──この問いを持ち続けることが、より豊かでストレスの少ない人生につながります。
ACTについて気になった方は
以下のページにてACTについて詳しく解説しています。
参考文献一覧
- 厚生労働省. 「こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」
https://kokoro.mhlw.go.jp/ - Hayes, S. C., Strosahl, K. D., & Wilson, K. G. (2011). Acceptance and Commitment Therapy: The Process and Practice of Mindful Change.
- 日本心理学会. 「価値観と行動指針に関する心理学的研究」
- Mayo Clinic. “Stress management and building resilience.”
https://www.mayoclinic.org/healthy-lifestyle/stress-management

