〜心を守るためにできること〜
うつ病は「心の風邪」とも呼ばれるほど身近な病気です。
誰にでも発症する可能性があり、一度回復しても再発することが少なくありません。実際に、うつ病の再発率は50%以上といわれ、再発防止はとても大切な課題です。
特に、再発を防ぐうえで有効とされているのが「認知行動療法(CBT)」です。ある研究では、薬の治療のみを受けた場合の再発率がおよそ70〜80%に対して、認知行動療法を受けた人では再発率が40%程度に抑えられることが報告されています。さらに、治療終了後もセルフケアとして活用できるのが大きな特徴です。
そのためには、治療と同じくらいセルフケア(自分でできる心のケア)が重要です。この記事では、うつ病を予防し、再発を防ぐために役立つセルフケアの方法を、初心者でもわかりやすく解説します。
目次
うつ病とは?
うつ病は、脳の働きや心のエネルギーのバランスが崩れることで起こる病気です。単なる「気分の落ち込み」や「怠け」とは違い、医学的な治療が必要な状態です。
うつ病の主な症状
- 気分が落ち込み、何をしても楽しくない
- 意欲が出ない、何もする気がしない
- 集中できない、仕事や勉強に支障が出る
- 眠れない、または寝すぎてしまう
- 食欲の低下または過食
- 強い疲労感が続く
- 自分を責める気持ちが強い
- 「消えてしまいたい」と思うことがある
こうした症状が2週間以上続く場合はうつ病の可能性があるため、医療機関への相談が必要です。
うつ病が再発しやすい理由
うつ病は治療で回復しても、再び発症してしまうケースが多い病気です。その背景にはいくつかの要因があります。
- 脳や神経の機能が完全に回復するまで時間がかかる
- ストレスに弱くなっている時期がある
- 生活リズムの乱れや再びの過労
- 完璧主義や自己否定的な考え方など性格的な要素
再発を防ぐためには、薬や治療だけでなく、日常生活のセルフケアが欠かせません。
うつ病の予防と再発防止に効くセルフケア
1. 睡眠を整える
心の健康と睡眠は深く関わっています。
- 毎日同じ時間に寝起きする
- 寝る前にスマホやパソコンを見すぎない
- カフェインやアルコールを控える
良質な睡眠はうつ病の予防・再発防止に効果的です。
2. 栄養バランスのよい食事
食事も心の健康に影響を与えます。
- 魚(特に青魚)に含まれるDHA・EPAは脳の働きをサポート
- 野菜や果物に含まれるビタミン・ミネラルはストレス耐性を高める
- 炭水化物はエネルギー源として大切
無理な食事制限をせず、栄養バランスを意識しましょう。
3. 軽い運動を取り入れる
ウォーキングやストレッチなどの軽い運動は、脳内のセロトニンを増やし、気分を安定させます。
- 1日20〜30分の散歩
- ヨガや軽い筋トレ
- 階段を使うなど日常の中で体を動かす
無理のない範囲で続けることが大切です。
4. ストレス対処法を身につける
ストレスはうつ病の大きなリスク要因です。
- 深呼吸や瞑想で気持ちを落ち着ける
- 音楽や読書など趣味の時間を持つ
- 信頼できる人に話を聞いてもらう
ストレスをため込みすぎないことが再発防止につながります。
5. 認知行動療法(CBT)をセルフヘルプで活用する
うつ病の再発防止に有効とされるのが認知行動療法(CBT)です。
- 気分が落ち込んだときの出来事や考えを記録する
- 「本当にそうだろうか?」と考え直してみる
- 新しい視点を取り入れて気持ちを切り替える
自分の思考のクセに気づき、柔軟な考え方を身につけることが再発防止につながります。
研究によると、薬のみの治療群に比べてCBTを取り入れた群は、再発率がおよそ半分程度に減少することがわかっています。特に「自分で続けられる形」で身につけておくと、治療が終わったあとも再発予防に役立つとされています。
そのため、医療機関でのCBTに加えて、セルフケアとして日記やワークシートを用いることも効果的です。
6. 生活リズムを安定させる
- 朝起きたら日光を浴びる
- 1日3食を規則的にとる
- 睡眠・食事・運動をバランスよく
生活リズムが整うことで、自律神経やホルモンバランスも安定し、再発リスクを下げられます。
7. サポートを受ける
一人で頑張りすぎるのは危険です。
- 家族や友人に気持ちを話す
- 医師やカウンセラーに相談する
- 自治体のメンタルヘルス相談窓口を活用する
「助けを求めること」も大切なセルフケアの一つです。
セルフケアを続けるための工夫
- 小さな目標を立てる:「毎日30分歩く」より「今日は10分歩く」から始める
- 完璧を目指さない:「できなかった日があってもOK」と考える
- 習慣化する:毎日のルーティンに組み込むと継続しやすい
セルフケアは一度きりではなく、生活の中に「当たり前の習慣」として取り入れることが重要です。
セルフケアだけでは不十分なとき
セルフケアはうつ病の予防や再発防止に役立ちますが、次のような場合は専門機関に相談することが必要です。
- 気分の落ち込みが2週間以上続いている
- 強い不安や焦燥感がある
- 仕事や日常生活に大きな支障が出ている
- 自分や周囲を傷つけたい気持ちがある
早めに専門家に相談することで、回復も早くなります。
まとめ
うつ病は誰にでも起こりうる病気であり、再発しやすい特徴があります。だからこそ、日常のセルフケアが予防と再発防止のカギとなります。
- 良質な睡眠
- 栄養バランスの取れた食事
- 軽い運動
- ストレス対処法の実践
- 認知行動療法の活用
- 規則正しい生活リズム
- 周囲のサポートを受ける
これらを少しずつ取り入れることで、心の健康を守りやすくなります。
大切なのは「無理をしないこと」と「一人で抱え込まないこと」。小さな工夫を積み重ね、心を守る生活を送っていきましょう。
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参考文献・出典
- 厚生労働省「こころの健康 うつ病について」
- 日本うつ病学会「うつ病の予防と治療」
- WHO「Depression」