「なんだかいつも不安」「漠然とした心配が頭から離れない」──そんな経験はありませんか?
多くの人は一時的に不安を感じますが、通常は状況が解決すれば気持ちも落ち着きます。
しかし、不安や心配が半年以上続き、生活に支障をきたす状態になると「全般性不安症(GAD:Generalized Anxiety Disorder)」の可能性があります。
この記事では、全般性不安症の症状・原因・診断基準・治療法・セルフケアについて、特別な知識がない方にもわかりやすく解説します。
目次
全般性不安症とは?
全般性不安症は、生活全般において過度な不安や心配が続く病気です。
「仕事がうまくいかないのでは」「家族が病気になるのでは」など、現実的な問題に限らず、根拠がないことまで心配し続けてしまいます。
不安はほとんど毎日のように起こり、自分の意思ではコントロールできません。
その結果、心身にさまざまな症状が現れ、仕事や学校、家庭生活に支障を与えます。
不安はほとんど毎日のように起こり、自分の意思ではコントロールできません。その結果、心身にさまざまな症状が現れ、仕事や学校、家庭生活に支障を与えます。
全般性不安症の主な症状
心と体に出るサイン
全般性不安症は精神的な症状と身体的な症状、行動に現れます。
精神的な症状
- 過剰な心配や不安が半年以上続く
- 不安を抑えられず、常に落ち着かない
- 集中できない、注意散漫になる
- 将来に対して悲観的になる
身体的な症状
- 筋肉の緊張(肩こり、頭痛など)
- 動悸、発汗、息苦しさ
- 胃の不快感、下痢など消化器症状
- 疲れやすい、倦怠感
- 不眠(寝つきが悪い、夜中に目が覚める)
行動の変化
- ミスを恐れて確認行為が増える
- 人付き合いを避ける
- 仕事や学業の効率が低下する
このように「心配ごとで頭がいっぱいになり、さらに体も疲れてしまう」という悪循環に陥ります。
「自分もそうかも?」と思ったら
生活にどんな影響が出るのか
単なる心配性と違って、全般性不安症では生活の質に大きな影響が出ます。
- 眠れず、日中も疲れて仕事の効率が落ちる
- 人と会っていても心配ごとが頭から離れず楽しめない
- 家事や育児に集中できず自己嫌悪に陥る
- 常に緊張していてリラックスできない
「気にしすぎ」「考えすぎ」と周囲に言われても、自分ではコントロールが難しいのが特徴です。
全般性不安症の原因
全般性不安症の原因はひとつではなく、脳の働き・性格的特徴・環境要因が関わると考えられています。
- 脳の神経伝達物質の不調
セロトニンやGABA(抑制系神経伝達物質)の働きが乱れることで、不安が過敏に生じる。 - 性格的要因
真面目、責任感が強い、心配性な性格の人に多い。 - ストレスや生活環境
仕事や人間関係のストレス、家庭内の問題、災害や病気などの出来事が引き金になる。 - 遺伝的要因
家族に不安障害を持つ人がいる場合、発症リスクが高い。
全般性不安症の診断基準
全般性不安症はDSM-5(米国精神医学会の診断基準)で以下のように定められています。
- 過度な不安や心配が6か月以上続いている
- その不安をコントロールできない
- 以下のうち3つ以上の症状がある
- 落ち着きのなさ
- 疲れやすさ
- 集中困難
- 易怒性
- 筋肉の緊張
- 睡眠障害
- 落ち着きのなさ
- 生活や仕事に著しい支障をきたしている
- 他の病気や薬物の影響では説明できない
全般性不安症の治療法
全般性不安症は適切な治療によって改善できます。
① 薬物療法
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
- SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
- 抗不安薬(短期的に使用されることが多い)
これらの薬で不安を和らげ、生活を取り戻すことが可能です。
② 認知行動療法(CBT)
不安の背景にある「考え方の癖」に気づき、現実的で柔軟な思考に切り替える練習を行います。
薬物療法と並び、エビデンスが強い治療法です。
③ リラクゼーション・マインドフルネス
呼吸法や筋弛緩法、瞑想などによって体の緊張をほぐし、不安を軽減します。
④ 生活習慣の改善
- 睡眠リズムを整える
- 適度な運動を習慣化
- カフェインやアルコールを控える
- バランスの良い食事
全般性不安症と他の病気との違い
よく似た症状を持つ病気と混同されることがあります。
- パニック症:発作的に強い不安が出る
- うつ病:気分の落ち込みが主体で、不安は二次的
- 強迫症:強いこだわりや確認行動が中心
全般性不安症は「漠然とした不安が慢性的に続く」点が特徴です。
心配性との違い
「自分は心配性だから…」と感じている人も多いかもしれません。では、一般的な「心配性」と医学的に診断される「全般性不安症」は何が違うのでしょうか。
1. 不安の強さとコントロールのしやすさ
- 心配性:多少不安になっても「まあ大丈夫だろう」と切り替えられる
- 全般性不安症:自分で不安を止められず、頭の中でぐるぐると考え続けてしまう
2. 不安の持続時間
- 心配性:出来事に応じて一時的に不安になる
- 全般性不安症:明確な理由がなくても不安が6か月以上ほぼ毎日続く
3. 生活への影響
- 心配性:生活や仕事に大きな支障はない
- 全般性不安症:睡眠障害、集中力低下、身体症状が出て、日常生活に支障が出る
4. 医学的な治療の必要性
- 心配性:性格的な傾向で、工夫次第で乗り越えられることが多い
- 全般性不安症:薬物療法や認知行動療法など、医学的な治療が必要になることが多い
全般性不安症のセルフケア
治療とあわせて、日常生活の工夫も役立ちます。
- 不安を書き出して整理する
- 「今できること」に集中する
- 適度な運動(ウォーキングやストレッチ)
- 趣味やリラックスできる時間を持つ
- 信頼できる人に気持ちを話す
まとめ
全般性不安症は、根拠のない心配や不安が半年以上続き、生活に影響を与える病気です。
原因は脳の働きや性格、ストレスなど複合的で、誰にでも起こり得ます。
治療には薬物療法や認知行動療法が有効で、セルフケアや生活習慣の改善も重要です。
「不安で生活がつらい」と感じたら、早めに精神科・心療内科へ相談しましょう。
参考文献一覧
- 厚生労働省. 「みんなのメンタルヘルス総合サイト 全般性不安症」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/nation/info_06.html - 国立精神・神経医療研究センター. 「全般性不安症」疾患ナビゲーション
https://www.ncnp.go.jp/nimh/clinical/gad/ - American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th Edition (DSM-5). 2013.
- Mayo Clinic. “Generalized anxiety disorder (GAD).”
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/generalized-anxiety-disorder/ - 世界保健機関(WHO). International Classification of Diseases (ICD-11).